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企業会計と法人税制 ~のれんと調整勘定・繰延資産~

令和3年5月31日掲載

前回は法人税関連のトピックとして、「企業会計と法人税制について」の個別論点を取り上げています。3回目は、「のれんと調整勘定」、「繰延資産」、における企業会計と法人税制の関係性について紹介させて頂きます。

 

1.のれんと調整勘定

 

企業結合に係る会計基準では、被取得企業又は取得した事業の取得原価が取得した資産及び負債の純額を超過する額を「のれん」とし、不足額が生じたときは「負ののれん」を認識することとしています。これらは、組織再編に際して、いわゆるパーチェス法を適用した場合に発生し、「のれん」及び「負ののれん」とも20 年以内に規則的に償却することとしています。

一方、法人税法には「のれん」に関する規定はないが、従来から無形減価償却資産として営業権が掲記されており、その耐用年数は5年とされています。企業結合会計基準との関係では、平成18 年度の税制改正において、非適格組織再編成や営業の譲受けにより移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額とその対価の差額を「資産調整勘定」又は「負債調整勘定」に計上するものとし、いずれも5年間で均等額を減額し、損金又は益金の額に算入しています。

企業結合会計と法人税法を対比すれば、「のれん」とされるものが「資産調整勘定」に相当し、「負ののれん」が「負債調整勘定」に当たると解されるが、それぞれの関係や内容について、法人税法上は必ずしも明確ではなく、同法における営業権と「のれん」の異同点も明らかになっているとはいえません。また、企業結合会計では「のれん」を20 年以内の期間で償却するのに対し、法人税法の「資産調整勘定」と「負債調整勘定」は、5年償却が強制されています。

このような会計と税制の差異や不明確な法令は、企業の組織再編に際して障害になる おそれがあり、のれんを非償却資産とする国際会計基準の動向にも留意しつつ、会計基 準と法人税制の間の調整方法を検討する必要があるとされています。

 

2.繰延資産

 

繰延資産の範囲について、企業会計上は、株式交付費、社債発行費等、創立費、開業費及び開発費の5項目としており、法人税法も平成19 年度税制改正の際に企業会計に平仄を合わせています。従来は社債発行差金が繰延資産とされていましたが、現行では企業会計、法人税法とも繰延資産から除外されています。また、支出時に費用処理することとされた試験研究費についても、企業会計と法人税法の間で取扱いに差異はありません。

繰延資産の償却期間について、企業会計は、3年以内、5年以内又は社債償還期間としていますが、支出時に費用処理することを原則としており、繰延資産に計上した場合でも早期に償却を行うという趣旨です。この点は、法人税法も同様であり、いわゆる随時償却が認められています。

企業会計と法人税法の差異は、後者には公共的施設の負担金など、多くの税法固有の繰延資産が規定されていること、これらについて会計上は資産計上を要せず支出時の費用として処理することが妥当なものであっても、税法規定に対応するため、実務上は長期前払費用等に計上した上で償却を行っています。

問題は、税法上の繰延資産の範囲について、法令等において具体的に特掲されているもののほか、「自己が便益を受けるために支出する費用で、支出の効果が1年以上に及ぶもの」という包括的な概念規定が設けられていることであります。このため、どのような支出が税法上の繰延資産であるかの判別が困難であり、償却期間となる「支出の効果の及ぶ期間」の判定も容易ではありません。

これらの問題を基因とする課税上のトラブルも生じていることから、企業会計と法人税法の取扱いを統一し、税法固有の繰延資産に係る規定は縮減又は廃止することが適当であるとされています。

 

おわりに

 

当然のことながら理念や目的が異なっている企業会計と法人税法ではありますが、可能である限り、企業の経済・経営活動に資する一体的な制度が望まれると考えております。

 

(税理士 青山 修久)

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