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法人税
「企業会計と法人税制 ②」

(令和2年11月9日号)

令和2年10月12日号で企業会計と法人税制の基本的考え方について、その両者の趣旨・目的は違えど相互に補完しあっている関係であるということを紹介いたしましたが、今回は、公正処理基準の意義と考え方についてご説明いたします。

 

II. 公正処理基準の意義と考え方について

1. 会社法、財務諸表等規則と法人税法の規定の関係

公正処理基準については、会社法、財務諸表等規則、法人税法にそれぞれ規定がありますが、下記のように同一ではありません。

①会社法(第431条)

一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする

②財務諸表等規則(第1条)

一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする

③法人税法(第22条第4項)

一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする

 

会社法の規定は、一般に公正妥当と認められる「企業会計の慣行」となっており、財務諸表等規則の「企業会計の基準」よりも広い概念であると解されています。

また、法人税法は、企業会計原則など明文化された企業会計の基準であっても、それを容認しない場合がある一方で、明文化されていないものでも公正妥当な会計処理であれば、それを容認することもあります。法人税法における「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」は、会計基準準拠主義の観点から、所得金額の計算方法を企業会計に近づけようとするものであり、企業会計の慣行や基準と重なる部分が多いですが、必ずしも同一ではありません。

いずれにしても、現行法人税法の公正処理基準の内容は明確であるとはいえませんが、所得金額の計算に関する規定を全て法人税法に設けることは物理的に不可能です。したがって、法人税法以外の企業会計の慣行や基準に依存することで法の目的を達成しようとしていると解されています。

 

2. 中小企業の会計に関する指針の意義と位置付け

国外の市場から資金調達を行わない中小会社の場合には、大企業と異なり国際会計基準に従った会計基準を適用することにメリットはありません。このため、日本税理士会連合会ほか3団体は、共同して中小会社の実態に即した「中小企業の会計に関する指針」を制定しています。同指針は、中小会社が計算書類を作成するに際し、準拠することが望ましい会計処理基準が規定されています。

中小企業の会計に関する指針の意義は、同指針が会社法における「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に含まれると解されること、また、上記の法人税法の公正処理基準の考え方からみて、この指針が法人税法における「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当すると考えられることです。

したがって、中小会社がこの指針に準拠して作成した計算書類は、会社法上適法なものであるとともに、その計算書類に表示された利益は、法人税の申告所得を算定する際の基礎となる利益としても適正なものとなります。

 

【参考】

会社法第431条

  株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。

 

財務諸表等規則(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則)第1条第1項 一部抜粋

金融商品取引法の規定により提出される財務計算に関する書類(以下「財務書類」という。)のうち、財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書…)の用語、様式及び作成方法は、第一条の三を除き、この章から第八章までの定めるところによるものとし、この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。

 

法人税法第22条

1 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。

5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

(税理士 山本 剛史)

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