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賃上げ税制の上乗せ措置について

投稿日: カテゴリー 税務トピックス

2018年度税制改正により、2018年4月1日に始まる事業年度より所得拡大税制の内容が大きく変更されています。

今回は改正により新たに追加された上乗せ措置の内容についてご説明します。

 

 

1.制度の概要

2018年4月1日~2021年3月31日に始まる事業年度に前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を税額控除できます。

 

(1)要件

①当期の給与が前期の給与を超えている

②当期の平均給与と前期の平均給与を比較して1.5%(大企業は3%)以上増加している

③国内の設備投資額が減価償却費の90%以上(大企業のみの要件)

 

(2)控除額(原則)

(当期の給与-前期の給与)×15%

 

(3)上乗せ要件

①大企業

当期の教育訓練費が過去2年平均と比較して20%以上増加している

②中小企業

当期の平均給与と前期の平均給与を比較して2.5%以上増加し、かつ、次のいずれかの要件を満たすこと

(ア)当期の教育訓練費が前年の教育訓練費と比較して10%以上増加している

(イ)経営力向上計画の実行

 

(4)控除額(上乗せ要件を満たす場合)

①大企業

(当期の給与-前期の給与)×20%

②中小企業

(当期の給与-前期の給与)×25%

 

(5)控除額の上限

法人税×20%

 

2.教育訓練費

 

(1)範囲

①教育訓練を自ら行う場合

・外部講師へ支払う報酬、料金、謝金

※外部講師 子会社・関係会社の役員、社員⇒○

自社の役員、社員⇒×

・外部講師の派遣料

・外部講師へ支払う交通費、旅費(宿泊費、食費等を含む)

・教育訓練を行う研修施設、会議室、実習室の賃借料

(子会社、関係会社の所有するものの賃借料を含む)

・教育訓練に使用する設備の使用料

・教育訓練に使用する器具備品の使用料

(プロジェクター、ホワイトボード、パソコン等)

・教育訓練に使用するコンテンツの使用、閲覧料金

(コンテンツDVD、e―ラーニング内のコンテンツ等)

・教育訓練に関する計画、内容作成を外部に委託する際の費用

②教育訓練を他の者に委託して行う場合

・教育訓練を行う費用(講師の人件費、施設使用料等)

※他の者

民間教育会社、公共職業訓練機関、商工会議所、一般企業

子会社、関連会社内の教育機関

③他の者が行う教育訓練等に参加させる場合(外部研修費参加費)

・研修、セミナー参加費、授業料、受講料

(所得税法上、課税されるものを除く)

④対象とならない費用

・役員、社員へ支払う人件費、奨励金等

・教育訓練参加のための旅費交通費、食費、居住費

・福利厚生目的など教育訓練以外を目的として実施する場合の費用

・法人が所有する施設の光熱費、維持管理費

・施設の取得に要する費用(減価償却費も対象となりません)

・教材の購入、製作に要する費用

(ソフトウェアやコンテンツの開発費も対象となりません)

・教育訓練の直接費用でない大学等への寄付金等

 

(2)明細書の記載事項

教育訓練費に関する次の事項を記載した一覧表の作成が必要となります。

①教育訓練を実施した年月(日は任意で記載)

②教育訓練のテーマや内容、実施機関

③教育訓練を受けた者の氏名

④教育訓練の費用を支払った年月日、内容、金額、相手先氏名が記載された領収書

 

3.経営力向上

中小企業で、当期の平均給与と前期の平均給与を比較して2.5%以上増加している場合には、教育訓練費要件に代えて、中小企業等経営力強化法に基づく経営力向上計画の実行がされているだけで上乗せの要件を満たしていることになります。

 

(1)経営力向上計画とは

事業者が、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画のこと。

認定された事業者は、税制や金融の支援を受けることができます。

 

(2)流れ

①事業年度終了の日までに経営力向上計画の認定を受ける

⇒詳しくはご相談ください。

②事業年度終了後、経営力向上が行われたことに関する報告書を作成し、経済産業省に提出する。

 

(3)上乗せ措置が受けられる指標

経営力向上による経営の向上の程度を示す指標は業種により様々です。

今回の上乗せ措置が認められる指標は次のものに限定されています。

①基本方針により認定を受けている場合・・・労働生産性

②事業分野別指標により認定を受けている場合

 

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*事業分野別指針 ・認められる指標

 

 

*全て ・労働生産性

・売上高経常利益率

 

 

*自動車整備業分野 ・点検整備入庫台数増加率

 

 

*貨物自動車運送事業分野 ・運転者の平均労働時間

・積載効率

・実車率

・実働率

 

 

*医療分野 ・職員の離職率

・勤続年数

・定着率

・ICTの活用等によるコストの削減

 

 

*障害福祉分野 ・障害福祉の職員の勤続年数

・離職率

・入職率

 

 

*介護分野 ・介護職員の勤続年数

・離職率

・入職率

 

 

*保育分野 ・職員の勤続年数

・離職率

 

 

*旅客自動車運送事業分野 ・実働率

・実車率

・運転者の平均労働時間

・日車営収及び平均乗車密度

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中小企業の場合、上乗せ措置の要件を満たせば、給与の増加額の1/4もの金額の控除を受けられるチャンスです。

ただし、教育訓練費の集計や経営力向上計画の作成にはかなりの時間を要しますので、早めに準備を行い、制度をうまく活用しましょう!

 

(税務コンサルタント 湯浅 さやか)