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中年会計士の、ちょっとだけ聞いて欲しい独り言(11)

投稿日: カテゴリー 税務トピックス

皆さん、お元気ですか。公認会計士の富田です。鬱陶しい梅雨入りも間近となってきましたが、「クール・ビズ」と「素麺」で乗り切ろうと考えているこの頃です。
前回のD銀行ニューヨーク支店での不祥事について、今回ももう少しご説明したいと思います。

 D銀行での不正は、日本の大蔵省(現金融庁)検査、日銀検査、国税局調査、監査法人監査、銀行内の検査部による検査、さらにはニューヨーク連邦準備銀行検査、ニューヨーク州銀行局検査、連邦預金保険機構、証券取引委員会等々、数え切れないほどのチェックを受けていたにも拘わらず10年以上もの長い間にわたってずっと行われていました。
 
 この間、犯行は不正な投機取引で発生した損失の穴埋めをするために、無断で有価証券を帳簿外で売却するという非常に単純なものだったので、もし、上記の諸検査のプロセスで、保管されている証券の現物を実際にチェックし、帳簿残高と照合していれば、簡単に発見することができたはずです。
 
 監査法人による監査に限ってご説明しますが、一般的に、私ども公認会計士は、監査のプロセスで現金ないし比較的に資金化が容易な資産については、現物を直接チェックする「実査」という監査手続を行います。
 しかし、D銀行不正事件において監査人はこの間一度も「実査」を実施していませんでした。銀行の金庫に保管されている現物の証券は膨大な量で、日本から出向いた会計士は出張中の限られた時間の中で、「実査」という手続まで手が回らなかったとも考えられます。
 
 外部の信託銀行にも証券が預託されており、これらについては残高証明が信託銀行から発行されていたはずで、これも帳簿の在高と照合すれば不一致は容易に発見できたはずです。
 しかし、これについては残高証明の記載を消しゴム等を使って、あるべき数値に巧妙に書き換えていたようです。さらに、実際に証券を売買すれば不明な資金移動が発生しますが、これは全て仮受金勘定で処理し、加えて偽造小切手の作成等により、帳尻を合わせていました。
 
 日々の取引明細は、一定の順序で保管すべきですが、照合が困難になるように故意に乱雑に保管して第三者による照合を困難にしていました。
 
 以上のように、現物の「実査」という手続がきちんと行われていれば、このような不正は相当早期に発見できたものとも考えられますが、犯人が「実査」が行われないのをよいことに、現物の取扱い、資金移動、経理処理と、証券に絡む一連の業務全ての責任者であった立場を利用して巧妙に発見を遅らせるよう策を講じていたことが良くおわかりいただけたと思います。
 外部のチェックの甘さも問題だったと考えられますが、それ以上に内部統制、牽制のあり方が重要である点もご理解いただけたでしょう。

 富田でした。