東京都中央区銀座の会計事務所 C Cubeコンサルティング

BLOG

7/6最近の人事・労働事件簿?

投稿日: カテゴリー 税務トピックス

一見まじめそうな、しかし残業代をせしめる常習犯。

 昔かたぎのいい会社
 埼玉県川口市に金属の研磨作業を請負っているA社があります。社長が裸一貫で築き上げてきた会社で、社員も勤続20年以上の人が殆ど。長年にわたり公私ともに歩んできた社員に対して社長も少なからず愛情をもって接していました。
 このような会社に、入社して2年足らずのBという20代の男性社員がいました。一見、生真面目そうで、そこそこがんばって働くので、次代を担う若者として社長も期待していたようです。Bには同棲中の女性がおり、会社の就業規則では結婚していないと家族手当は支給しないところを、特別に住宅手当として他の社員と同額の手当を支払ったり、生活費が足りないと聞けば給料の前借としてお金を貸したりしていました。

 辞めたら監督署に訴えた
 このBが今年に入ってから急に休みがちになりに、2月に自己都合で退職してしまいました。そしてその足で労働基準監督署に行き「A社で残業代をもらっていなかった」と訴えたのです。とはいっても、A社はきちんと計算して残業代を支払っていて、Bについても時間単価の2割5分増しの額を支払っていると考えていたので、社長としてはまさに青天の霹靂。「何故?」「なんで?」という思いが先行してしまい、どう対処してよいかわからなくなったようです。

 土曜日の残業代が抜けていた
 私がこの事件の処理の依頼を受けてA社に赴き、給料の支払い状態を調べた結果、月曜日から金曜日の残業代は正確に支払われていましたが、土曜日の勤務時間に対しての残業代が未払いでした。1日の所定労働時間が8時間なので、月曜日から金曜日ですでに所定労働時間は40時間になってしまいます。となれば、土曜日は朝からすでに残業であることにA社は気づいていなかったのです。

 お金ほしさの常習犯
 監督署を仲介にしてのBとの交渉は結構長引きました。最初、監督署から「半年分の残業未払い分を支払うように」という是正勧告を受けていましたので、その分を計算して支払うとBから「2年分もらえるはずじゃないの?」とくってかかられ、かわいそうに監督官も巻き込まれて辟易していました。後で分かったことですが、Bは以前からこのようなことを繰り返しており、労務管理に甘い中小企業からお金をせしめていたのです。

 この事件の教訓
  結局、3ヶ月ほどかかってこの事件は解決しました。こちらがのらりくらりの戦法に出ているのに嫌気がさしたBが、こちらの提示した金額に少し上乗せした金額で妥結を言い出し、和解となりました。
 人数の少ない会社の場合、社長から社員たちの働く姿がよく見えるので、ついつい労働条件を甘くしたり、アバウトな労務管理をしたりします。しかし、それは危険です。他人を採用して働いてもらうのですから、お互いが誤解しないように労働条件を文章にして明示しましょう。社員はあくまで他人なのです。
その後、A社はほこりのかぶった就業規則を全面的に見直し、勤務時間の定義、給料の手当の支給条件、残業代の算出基準などを改善して、無理のないしかし適法な労働条件を構築しました。先日、A社でこの事件の話しをした時の社長の一言「あの時は恩をあだで返されたと思って悔しかったけど、結果、会社が人事や労務をおざなりにできないってわかってよかったよ」

社会保険労務士 森